外壁塗装をする際、塗装の費用とともに気になるのが自宅の周囲に設置する足場についてです。
「自宅の外壁塗装をしたいけれど、足場は絶対に建てないといけないものなのか？」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
本記事では、外壁塗装の足場設置にかかる費用が変動する要因や足場が必要な理由、外壁塗装で使われる足場の種類、足場を建てる際の注意点などを解説します。
自宅の外壁塗装を検討している方は、ぜひ最後まで読んでください。
外壁塗装で足場を設置する際、次のようなケースでは施工費用が相場より変動します。
場合によっては相場より高額になってしまう場合があるため注意しましょう。
・3階建て以上の住宅
・足場の設置や資材運搬が難しい立地
・道路の使用許可が必要な場合
それぞれの理由について詳しくみていきましょう。
3階建て以上の住宅では、通常の足場と比べて資材量が増えるのはもちろん、施工の手間などのコストが余計にかかります。
自宅が3階以上の場合は、外壁を塗装する箇所にもよりますが、足場費用が高くなる可能性があると考えておきましょう。
なお「塗装するのは1階部分だけ」といった場合は費用が変動しにくいです。
住宅の立地の関係から足場が組みにくい場合にも、費用が高くなってしまうケースがあります。
・隣の家との間にスペースがない
・敷地のそばに車が停められず部材が手運びになってしまう
・家がアクセスしにくい場所に建っている
心当たりがあれば、費用が高くならないか業者に相談してみましょう。
足場の設置で自宅前の道路にトラックなどを停めておかないといけない場合は、専用の許可が必要です。
道路使用許可・占有許可をとるためには、申請手数料や誘導員をつける費用などがかかるため施工コストが高くなります。
道路使用許可は、使う道路が私道の場合には必要ないため、詳しくは業者に相談してください。
足場の設置場所にカーポートがある場合、費用が増える可能性があります。
足場の設置場所がある場合、カーポートを一度取り外し、工事後に再度取り付けなければならない場合があるからです。
カーポートの取り外しと取り付けの作業費用が追加される分、費用が割高になってしまいます。
カーポートと同様にベランダルーフなども、取り付けと取り外しの作業が必要となるため追加費用がかかります。
作業が増える分、費用だけでなく工期が長くなることも認識しておきましょう。
伝統的な日本家屋も、足場を設置する費用が増えることがあります。
日本家屋は下屋根があることが一般的です。
下屋根がある分、現代の2階建ての住宅と比べてジャッキなどの必要な部材が増えるため、費用が割高になってしまいます。
さらに斜面に建っている場合や1階部分が車庫になっている、隣家との距離が短いなどの場合は、運搬費が追加されることもあります。
伝統的な日本家屋で足場が必要な工事を行う際には、足場の設置が割高になることがあるのをご認識ください。
外壁塗装を行う際に、足場が必要とされる理由は主に次の3つです。
・作業員の安全確保
・近隣住宅への配慮
・施工効率と品質の向上
それぞれ、詳しく解説していきます。
作業員が安全かつ適切な塗装を行うためには足場が必要不可欠です。
足場がないと足元が不安定になってしまうため作業効率が悪くなるだけでなく、転落事故につながる恐れがあります。
作業員は数メートルの高所で重い塗料缶をもって作業を行わなければならないため、足場を設置せず、梯子だけで作業するのは大変危険です。
足場は、近隣の住宅に配慮するためにも設置しなければなりません。
足場を組み立て、シートを貼っておかないと、作業中に塗料や外壁の汚れを落とす際に行う「高圧洗浄」で水が飛散してしまう恐れがあります。
ご近所に迷惑をかけず、無用なトラブルを避けるためにも必ず足場設置が必要です。
作業効率をあげて施工の品質を担保するためにも、足場の設置は欠かせません。
不安定な場所で作業していると作業員が集中できず、丁寧な塗装ができなくなったり、出来栄えにムラができてしまったりする恐れがあります。
どれほどベテランの職人でも、強風や転落などを心配しながらでは本来の実力を発揮できません。
品質低下を防ぎ、満足できる施工を行ってもらうためにも足場を設置しましょう。
外壁塗装で使用される足場には、主に次の3種類があります。
・くさび緊結式足場
・単管ブラケット足場
・単管足場
それぞれの特徴と推奨される足場について詳しくみていきましょう。
ビケ足場、くさび足場とも呼ばれ、近年最も多く使われている足場です。
鉄パイプをブラケットと呼ばれる部材で組み建てる足場で組み立てがやりやすく、解体にも時間がかからなくなっています。
パイプに渡してある鋼板の幅が広いため、作業しやすく安全性も高いのが特徴です。
欠点としては足場を組み立てる際にくさびをハンマーで打ち込まなければならず、近隣に音が響く点があげられます。
一定のスペースを必要とする足場のため、住宅の外壁と塀の間にある程度の幅がないと建てられません。
単管パイプと呼ばれるパイプをクランプ、ボルトで固定して組み立てる足場です。
ブラケットの固定部位にはボルト締めを必要とするため、組み立てと解体には少し手間がかかるものの、ビケ足場よりも狭いスペースに建てられます。
パイプ同士を金具で固定するため強風などに対しても一定の強度があり、足元には踏み板を渡せるので単管足場よりも作業員が施工しやすく、安全性も高くなっているのが特徴です。
単管と呼ばれる細長い鉄パイプを組み合わせて建てられる足場です。
足元に踏み板を設置しないのが単管ブラケット足場と異なる点で、作業は横に渡した鉄パイプの上で行います。
パイプのみで作られているため、注意していないと落下の危険性があるのがデメリットです。
狭い場所にも設置できるメリットがあるものの、事故の危険があるため、近年ではあまり使われていません。
隣の家との間にスペースの余裕がなく、ほかの足場がどうしても設置できない場合を除いて基本的におすすめできない足場といえます。
外壁塗装の足場でよく使われる部材は以下のとおりです。
・支柱
・アンチ
・ブレス
・ブラケット
・手すり
・ジャッキ
それぞれどのような部材か解説するので、ぜひ参考にしてください。
支柱とは、部材を結合する留め具となるコブが一定間隔ごとについている銅管のことです。
コブの部分に斜材の緊結部や水平材をくさびで緊結し、足場を組み立てます。
支柱には長さの異なる種類があり、これらを組み合わせることで、あらゆる高さの建物に対応できます。
アンチとは、作業用のステージや通路などの床部分に敷かれている部材のことで、高所での作業に欠かせない部材です。
正式名称は「アンチスリップ鋼板」で、「足場板」や「踏み板」「布板」などとも呼ばれています。
銅板に穴をあけることで滑り止めや通気性が施されています。
長さや横幅などによって異なる種類があり、これらを組み合わせることであらゆる足場に対応可能です。
ブレスとは、支柱と支柱の間に斜めに挿して足場の構造を補強する部材のことです。
「筋交」や「筋違」とも呼ばれています。
支柱のみで造られた四角形の構造体は、水平方向に力が加わると支柱が傾いて変形します。
そこにブレスを斜めに挿すことで、四角形の構造から三角形の構造になり、強度を高めることが可能です。
ブレスを挿すことには足場の耐震性を高める効果もあるため、足場の安全性や強度維持において、ブレスは欠かせない部材です。
ブラケットとは、アンチなどを支柱に固定することを目的とした直角三角形に近い形状の金具のことです。
「持ち送り」とも呼ばれています。
支柱や壁などの垂直部分にブラケットを取り付けることで、足場がよりしっかりと支えられるため、安定した状態での作業が可能です。
ブラケットは形状によって「固定型」「伸縮型」「張り出し型」などに分類され、必要に応じて使い分けます。
適切に使用することで、足場の倒壊といった事故を防ぐことが可能です。
手すりは、落下防止のために支柱の緊結部に打ち込む銅管のことです。
足場の組み立てや解体の際、先行して手すりを設置することを「手すり先行法」といいます。
常に手すりがある状態で作業できるようにすることで、足場から外への転落や墜落などを防止し、作業員の安全が確保できます。
ジャッキとは、足場の最下部に設置して上下の高さを調整する資材です。
ジャッキベースと呼ばれる足場の沈下を防止する資材を取り付け、地上に設置して使用します。
ジャッキを使用することで支柱の位置が平行になり、手すりやアンチなども平行を保てます。
足場を平行に組むことで荷重が分散するため、足場の倒壊などの事故を防ぐことが可能です。
ジャッキを使用することで足場の安定性も高まるため、作業員の安全確保には欠かせません。
外壁塗装で足場を組む際には、次のポイントに注意してください。
・近隣への配慮
・建物や周辺のモノの注意
・日常生活への影響
詳しく解説していきます。
足場を設置・解体する際には、ハンマーでパイプやくさびを打つ音など騒音が出るため、近隣の住宅に配慮しないとトラブルが起きる場合があります。
近所の人には、あらかじめ足場を組むと伝えておくとともに、迷惑になる朝晩を避けて作業してもらいましょう。
施工業者が近隣に足場設置の挨拶回りをする際は、施主も同行するとより効果的です。
足場を設置する際に、業者の不手際によってお家に傷がついたり周囲にあるモノが破損したりする恐れがあります。
プロの業者であれば基本的にこのような問題はありませんが、作業を行う職人も人間であるため、ミスが発生する確率をゼロにはできません。
施工中のトラブルにはどれくらい対応してくれるのか、塗装を相談するタイミングで確認しておきましょう。
塗装が終わるまでの間は、家の周囲の足場で作業員が動き回っているため、日常生活に支障が出てしまう可能性があります。
足場からは住宅内部も簡単に見えてしまいます。
窓が開けづらい、洗濯物が干しにくいなど、ある程度窮屈な生活になったり、ストレスを感じたりする覚悟はしておきましょう。
施工業者が瑕疵保険に未加入の場合があるため、依頼する業者が保険に加入しているのか、事前に確認しておきましょう。
瑕疵保険は工事中や工事後に発生した損害を補償する保険です。
足場の仮設や解体の際に外壁や窓、車などを傷つけてしまうトラブルは少なくありません。
業者が瑕疵保険に加入していると損害を補償してもらえることが多く、万が一の際に安心です。
しかしリフォーム工事の瑕疵保険は任意保険のため、すべての業者が加入しているわけではありません。
保険の補償の範囲が、損害箇所をカバーできていないケースもあります。
工事を依頼する前に、業者が瑕疵保険に加入しているかどうかや加入している保険の補償範囲などを確認しておきましょう。
庭でガーデニングをしている場合、植木や花の移動や植え替えが必要な場合があります。
足場を設置する際に植木鉢やプランターを壊してしまったり、足場の下にある花への水やりが難しくなったりするためです。
移動や植え替えを行わずに足場を組むと、最悪の場合は花が枯れてしまうおそれがあります。
植木鉢やプランターを家の中に移動させる、植木や花を足場から離れた位置に植え替えるなどの対策が必要です。
どちらも難しい場合は業者に相談してみましょう。
足場が組まれていると足場を伝って外部から空き巣が侵入しやすい傾向があるため、ご注意ください。
足場や飛散防止ネットにより、周囲から家の様子がわかりづらいことも空き巣に狙われやすいポイントです。
2階以上であっても、窓を開けっ放しにしていると空き巣が侵入してくる場合があります。
足場が組まれている間は、いつも以上に戸締まりをしっかり行うようにしましょう。
外壁塗装における足場の設置に関して、よくある以下の質問に回答していきます。
・足場代が無料になるケースはある？
・足場なしで外壁塗装をすると違法になる？
・DIYでも足場は業者に依頼すべき？
詳しく解説します。
外壁塗装業者のなかには、足場の費用が無料と謳っているところもあります。
ただし「足場がタダになる」といわれた場合には注意が必要です。
足場を設置するには、資材の確保や作業員の人件費などがかかるため、無料にするのは基本的に無理です。
足場設置無料をアピールしている業者は、費用を施工代金に上乗せしているだけの場合もあるため依頼の際には注意してください。
外壁塗装を依頼するなら、足場の費用もセットで必要になると考えておくべきでしょう。
外壁塗装に関する足場の設置については、法律で2メートル以上の場所で作業を行う場合に危険があれば足場を設置するように定められています。
もちろん足場を使わない工事でも、違法にならない場合もあります。
ただし安全性や作業効率があがるため、一般的には外壁塗装を行うときは足場を設置したほうが良いです。
そもそもDIYで外壁塗装はおすすめできません。
慣れていない人が外壁塗装を行うと、塗りムラが発生したり適切な方法で塗装できなかったりと、キレイに仕上がらないリスクがあるからです。
思ったように塗装を外壁に濡れず、改めて業者に塗り直しを依頼しなければならないリスクもあります。
また、外壁の高い箇所を塗る場合に脚立を使うこともありますが、バランスを崩してしまい落下してケガを負う恐れもあります。
外壁塗装は業者に依頼するのがおすすめです。
足場の設置期間は、塗装の規模や施工内容などにより大きく異なります。
外壁塗装にかかる期間は7～10日間が目安です。
この期間には足場の仮設から解体までが含まれます。
外壁と一緒に屋根も塗装する場合は10～14日ほどが目安です。
大規模な建物の場合は数週間かかる場合もあります。
天候などの影響により、予定よりも期間が前後することもあります。
施工会社とコミュニケーションを取って、おおよそのスケジュールや進捗状況を把握しましょう。
都市部をはじめ、隣家との距離が近く足場を組むスペースが狭い場合は少なくありません。
一般的に足場を組むのに必要な最低限の距離は70cmです。
70cm以上の距離があれば、足場を無理なく設置できます。
70cm未満の場合でも、30cm程度の距離があれば狭小地用の足場を組んで作業が可能です。
距離が30cmもない場合は、隣の敷地を使用させてもらうことで解決できることがあります。
このような場合は、事前に隣の家に敷地の使用をお願いしましょう。
事前にお願いすれば了承してくれる方が多い印象ですが、施工期間中は迷惑をかけることになります。
そのため業者に任せず、施主自身も積極的に隣人とコミュニケーションを取る必要があります。
必要があるなら外壁と屋根を一緒に塗装するのがおすすめです。
外壁塗装でも屋根塗装でも、施工の際には足場の設置が必要になります。
使用する足場の費用はどちらの工事であっても大きな違いはありません。
外壁と屋根をまとめて塗装することで、足場の設置1回分の費用が節約できます。
屋根も外壁も定期的に塗装する必要があります。
ただし「外壁と屋根を同時に塗装する」場合にかかる費用は、「外壁のみ塗装する」場合にかかる費用より高いです。
必要性があれば同時に塗装するのがお得ではありますが、必要がないなら外壁だけ塗装するほうがお得です。
外壁塗装を実施する際は、作業員の安全確保や周囲への飛沫防止、施工品質の向上などのため、足場の設置が必要です。
足場設置では、近隣への配慮や日常生活への影響や通常よりも施工費用が高額になるケースもあるため、施工の際には事前に業者と話し合っておきましょう。
トラブルを避けるため、事前に近所の人に足場の設置に関して話をしておくのも大切です。
安全かつ効率的に作業を進めるため、外壁塗装では足場の設置もセットで必要になると考えておきましょう。
