外壁塗装は建物の美観を守るだけでなく耐久性を向上させる役割を果たします。
しかし、塗装時に塗料の希釈率を間違えてしまうと塗料本来の性能が損なわれてしまい仕上がりに影響を与えてしまいかねません。
本記事では希釈率について下記の内容を中心に解説していきます。
・希釈率とは何か
・なぜ希釈する必要があるのか
・希釈率を間違えるとどうなるのか
・正しい希釈方法
外壁塗装で失敗しないためにもぜひ本記事を参考にしてください。
希釈とは「溶液に水や溶媒を加えて薄めること」です。
塗料は原液の状態で販売されていますが、現場で希釈してから使用します。
出荷時の原液は粘度が高く、そのままでは刷毛やローラーで塗装しにくいです。
そのため、水や塗装用のシンナーを使って塗料を希釈して適切な粘度に調整します。
学生時代に図工や美術で行っていた、絵具を使うときに水で溶かすイメージに近いです。
希釈率とは、塗料を希釈するときに溶媒を入れる割合のことを指します。
たとえばメーカー設定の希釈率が5%の塗料10kgを希釈する場合、500g(ml)の水が必要になります。
適正な希釈率で希釈しないと、塗装時にムラができたり塗膜が薄くなったりと、きれいに仕上がりません。
正しい希釈率で塗装することで塗料の本来の力が発揮され、きれいに塗装ができて高い耐久性を保ってくれます。
塗料を希釈する理由は大きく分けて以下の3つが挙げられます。
・作業性を向上させるため
・仕上がりがきれいになるため
・塗料の性能が向上するため
それぞれの理由を確認していきましょう。
希釈すると塗料の粘度が下がり、塗装しやすくなります。
塗装時の塗りムラや刷毛跡が出にくくなるので、作業性が向上します。
特に夏場のように気温が高いと塗料の粘度も高くなり、作業時にムラが発生しやすいです。
希釈して粘度を抑えることで塗料が刷毛やローラーになじみ、塗料の密着性も向上します。
また、高所作業の場合は希釈することで塗料の飛び散りや垂れの抑制も可能です。
希釈によって作業員の安全性も高めることができます。
希釈することで塗料を適正な粘度に調整すれば、塗装時に塗膜の厚みが均一に保たれ美しい仕上がりになります。
気泡やムラが発生しにくくなるので、表面を滑らかに仕上げることが可能です。
希釈が不足すると塗料を厚く塗りすぎてしまいムラができやすく、希釈しすぎると塗膜が薄くなる恐れがあります。
また、塗料の種類によっては希釈することで艶や光沢を調整することもできる場合もあります。
塗料メーカーが推奨する希釈率で希釈することで、塗料本来の性能を最大限に発揮できます。
耐久性や耐候性や防カビ性などの性能が向上するので、長期間の使用が可能です。
塗膜の密着性を高めて耐久性が高まるという効果も期待できます。
塗膜の密着性が高いと塗装の剥がれが起きにくくなり、表面の硬度が高く傷がつきにくくなります。
塗料の持つ性能を100%発揮するためにも適切な希釈が必要です。
外壁塗料は希釈する溶媒によって水性塗料と油性塗料の2種類に分かれます。
これらの塗料の特徴と目安の希釈率について紹介します。
なお同じ種類の塗料でもメーカーや製品によって希釈率は異なりますので、ご理解いただいたうえで参考にしてください。
近年主流となっている水性塗料は、溶媒に水を使用する塗料です。
油性塗料に比べて臭いが少なくシンナーなどの有機溶剤を含みません。
安全性に優れており使い勝手がよく環境へも配慮されている優れた塗料です。
一昔前までは水性塗料は油性塗料に比べると耐久性が劣っているという評判でしたが、近年は塗料メーカーの努力により遜色ない高さの耐久性を誇るようになっています。
一般的な水性塗料の希釈率は0〜20%です。
一昔前は主流だった油性塗料は、水性塗料よりも耐久性に優れた塗料です。
しかしシンナーなどの有機溶剤を含んでいるため近づき難い臭いがします。
乾燥するまでに時間もかかるので、塗装時間が長くなってしまうのも特徴です。
水性塗料よりも引火性が高いので、扱いに注意が必要な塗料でもあります。
一般的な希釈率は5～40%です。
ただしメーカーや製品によって異なるため注意が必要です。
希釈率を誤って塗装すると、以下のような問題が発生します。
・希釈しすぎると、塗料本来の性能が損なわれる
・希釈不足はムラや剥がれの原因になる
希釈は過剰にしても不足してもいけません。
適正な値で希釈することが外壁の塗装をきれいに仕上げるコツです。
希釈しすぎると塗料の粘度が低くなります。
塗膜が薄くなり下地の色が透けて見えるなど、美観性の問題が起きるかもしれません。
さらに耐久性が低下して傷が入りやすく経年劣化するスピードが早くなります。
希釈をするときには過度な希釈にならないように少しずつ溶媒を加えながら、粘度を調整していくのが一般的です。
あえて過剰に希釈して塗料を節約しようとする悪徳業者もいます。
こういった詐欺に引っかからないよう、実際に業者に依頼するときは評判も含めて検討しましょう。
希釈が不足すると塗料の粘度が高くなり、ハケの跡がつきムラができてしまいます。
塗料の伸びが悪くなり、塗装時の密着率が下がると塗装の剥がれの原因になります。
十分な乾燥ができていないとベタつきや臭いが残ってしまうかもしれません。
さらに刷毛やローラーの跡が残ってしまい仕上がりもきれいとは言えません。
希釈が不足しないよう粘度を確認しながら溶媒を足して調整していきます。
実際に塗料を希釈する時の手順を紹介します。
外壁塗装をする際に、現場で塗装を行う職人は以下の手順で塗料を希釈していきます。
・希釈量を計算する
・希釈する
・希釈は塗装の直前に行う
各手順について解説していきます。
まずは希釈率をもとに加えるべき溶媒の量を計算します。
たとえば水性塗料であれば、どれだけの水を混ぜるべきか、正確な数値の計算が必要です。
塗料にもよりますが、メーカーが指定している希釈率は5〜10%と幅を持たせてあります。
希釈率の上限値である10%分、溶媒を用意しましょう。
用意するのは水性塗料の場合は水道水、油性塗料の場合は塗装用のシンナーです。
水道水は現場であるお客様の自宅から使わせていただくこともあるのでご了承ください。
計算して加える溶媒の量が決まったら希釈していきます。
少しずつ希釈していき、過剰に入れないように注意しつつ粘度を見ながら気温に応じて希釈率を調整していきます。
夏場などの気温が高い時は塗料がさらさらとしているので、希釈率は下限値に向かって調整しましょう。
目安の希釈率が5～10%であれば、まずは5％を狙って粘度を見ながら調整していきます。
冬場は気温が低く塗料がどろっとしているので高めに調整していきます。
一度溶媒を入れてしまうと戻せないので慎重に作業を行うことが必須です。
希釈した塗料は、時間が経つにつれて粘度が変化したり成分が分離したりしてしまう可能性があります。
そのため希釈は外壁塗装の直前に行います。
また一度希釈した塗料は長時間放置しないことが重要です。
時間が経つと水分が蒸発して、希釈した塗料が固まってベタベタになってしまいます。
当日希釈した塗料は当日中に使い切るよう心がけましょう。
外壁塗装は建物の美観を守るだけでなく、耐久性を向上させる重要な役割を果たします。
しかし、希釈率を誤ってしまうと塗料本来の性能が損なわれ仕上がりに大きな悪影響を与えてしまうかもしれません。
外壁塗装は塗料の希釈を含めた専門的な知識と技術が必要となるため、経験豊富なプロである業者に任せることをおすすめします。
外壁塗装を検討されている方は業者に問い合わせてみましょう。
